途中

8日目、ワルシャワは最高だった。なのに、この先の旅が崩れた

ワルシャワで迎えた朝。この日は、旅の中でも特に「満たされた」一日になるはずでした。

郊外に泊まっていた宿をチェックアウトするとき、宿のおじさんと少し話をしました。おじさんいわく、ピエロギという郷土料理がめちゃくちゃおすすめで、来たならぜひ食べろ、とのこと。そこまで言われたので、この日の最初の目的地はそれで決まりです。

1枚で、バスも地下鉄もトラムも

市内へはバスで向かいます。ワルシャワの公共交通はゾーン1とゾーン2に分かれていて、料金も全然違います。ただ、観光でまわるぶんには、空港以外はだいたいゾーン1に収まるようです。

おもしろいのは、バスも地下鉄もトラムも同じ会社が運営していること。1回払えば、決められた時間内ならどれにでも乗り放題という、ちょっと変わった料金の仕組みです。

幸せだったなあ

旧市街の近くを歩いていると、街並みにすっかり溶け込んだスターバックスを見つけました。後でコーヒーを飲みに来よう、と心に決めて通り過ぎます。

着いたのは、ポーランド料理の名店。テラス席に座ってメニューを開くと、タルタル、ポテト、豚肉料理と、おいしそうなものがずらりと並んでいます。名物のピエロギだけでも6種類くらいの味がある。もちろん一人でそんなに食べきれるわけもなく、かなり迷いました。

頼んだのは、ザワークラウトと肉を煮込んだビゴスをパンに詰めた料理、焼きピエロギ、ビール、そしてウォッカ。ビールは地元のジヴィエツというブランドで、水みたいにすいすい飲めてしまう。恐ろしいビールです。

ポーランド料理。パンに入ったビゴスと、ヨーグルトソースを添えた焼きピエロギ、ビール

ポーランド料理。パンに入ったビゴスと、ヨーグルトソースを添えた焼きピエロギ、ビール

丸いパンのふたを開けると、中には玉ねぎと肉がたっぷり。ザワークラウトがビールに最高に合います。メニューに「ウォッカと一緒に食べるのがおすすめ」と書いてあったので、それにも従いました。ウォッカは、飲んだ瞬間から喉がカーッと熱くなりました。

ようやく来たピエロギは、豚肉入りを選びました。この店ではヨーグルトソースをつけて食べるのが流儀だそうです。調子に乗ってソースをたっぷりのせてしまい、計画性のなさがここでも出ました。皮は厚めでもちもち。焼き餃子のような食べ物です。

ピエロギを食べたときの反応は、動画で見返すとかなり薄いのですが、内心はめちゃくちゃ喜んでいました。幸せだったなあ、と思います。

ビールの底に、蜂が入って泳いでいたことを除けば。勝手に入ってきて、勝手に泳いでいました。

鉄道博物館と、ショパン

お腹が満たされたところで、地下鉄へ。駅はピカピカで、改札はスマホのアプリにQRコードを出して端末にかざすだけで通れます。東京の改札でもPayPayで入れたらいいのに、と思いました。

ワルシャワの地下鉄の路線図

ワルシャワの地下鉄の路線図

地上に出ると、トラムが走る交差点の向こうにガラス張りの高層ビルが建ち並んでいました。日本でいう丸の内のような場所なのかもしれません。

ワルシャワの鉄道博物館へ。昔の駅舎を改装した博物館で、ポーランドでも最大級の鉄道遺産のコレクションがあるそうです。

庭に出ると、貨車と貨車のあいだに、しれっと装甲列車が挟まっていて驚きました。重さは200トンもあるそうで、側面の装甲はとにかく分厚い。何気なく歩いていたところにこれが現れたので、本当にびっくりしました。

鉄道博物館に展示されていたポーランドの鉄道地図

鉄道博物館に展示されていたポーランドの鉄道地図

戦後に造られた大きな蒸気機関車や、座席の一つひとつまで作り込まれた客車の模型もありました。ガラスケースには、昔の旅人が使った革のトランクと一緒に、ニベアの青い缶が並んでいます。ニベアって、そんなに昔からあったんですね。入場券は、昔の切符のようなデザインです。おしゃれでした。

トラムを待っているあいだに、急などしゃ降り。傘は持っていませんでした。これはやばい。トラムに乗って旧市街へ戻ります。

向かったのは、朝見つけたあのスターバックス。スマホのホルダーを持っていなかったので、アメリカーノのカップをホルダー代わりにして撮影していました。店を出て見上げた建物の壁には、大きな肖像画。フレデリック・ショパンです。

ショパン博物館は、宮殿のような内装でした。それもそのはずで、博物館が入っているのは17世紀に建てられた宮殿です。この建物も戦争で壊され、戦後に建て直されたものだそうです。ただ、正直に言うと、ショパンのことをもう少し知ってから行けばよかった、というのが感想です。音楽が好きな人なら、行って損はないと思います。

ショパンとロマン主義の展示のポスター

ショパンとロマン主義の展示のポスター

ショパン博物館の展示

ショパン博物館の展示

ワルシャワの大通り。白い柱の建物と街灯が並ぶ

ワルシャワの大通り。白い柱の建物と街灯が並ぶ

80年で、すべて建て直された街

旧市街を歩きました。重厚な建物が並ぶこの街並みは、戦争でほとんど破壊され、戦後に再現されたものです。1944年のワルシャワ蜂起のあと、旧市街はほぼ跡形もなくなりました。それを戦後、市民が古い姿のとおりに建て直し、その再建そのものが評価されて、1980年に世界遺産になっています。

今見えているものが、すべて80年ほどの間に建て直されたものだと思うと、驚きます。そのわりに、壁には落書きが放置されているところもあって、管理しきれていないのかな、と感じる場面もありました。

城壁は、赤レンガでできていました。日本の城の石垣とはまるで違います。ポーランドのあたりは建物に使えるような良い石が少なく、粘土を焼いたレンガが主流になったそうです。

さっきまでのどしゃ降りがうそのように、気づけば雨は上がって、空はだんだん晴れてきていました。

サスキ宮殿の再建工事の囲いに書かれた「REBUILDING WHAT SHOULD NOT HAVE BEEN DESTROYED」の文字

サスキ宮殿の再建工事の囲いに書かれた「REBUILDING WHAT SHOULD NOT HAVE BEEN DESTROYED」の文字

「壊されるべきではなかったものを、建て直す」。戦争で失われたサスキ宮殿の再建工事の囲いには、そう書かれていました。サスキ宮殿は1944年の暮れにドイツ軍に爆破され、残ったのは無名戦士の墓があるアーチの一部だけでした。その宮殿を、2030年の完成を目指して建て直す計画が進んでいます。この街の再建は、80年たった今もまだ続いているのです。

東欧を、なめていた

この夜の宿は、1泊4,488円のホステル。個室が取れました。これでこの値段はあり得ない、と思うくらいの部屋で、安すぎて申し訳なくなるレベルでした。

買ってきた缶ビールとサラミで、部屋で晩酌。缶ビールは1本100〜120円ほど。昼と同じジヴィエツは、やっぱり水みたいに軽いビールでした。贅沢をしなければ、ポーランドは日本より物価が安い国です。

そして、部屋で気づきました。予定では、ブダペストからブカレスト経由でイスタンブールまで夜行列車で向かうつもりでした。ところが、ブダペストからブカレストへの列車が、この先1週間ずっと満席なのです。

この先の旅は、もうダメになるかもしれない。東欧をなめていました。

それでも、ワルシャワまでは順調に来られました。イスタンブールまでの東欧の旅は、また次の機会に取っておくことにします。

残りは2週間弱。イスタンブールはあきらめて、中央ヨーロッパを地方のローカル列車でゆっくりまわる旅に切り替えることにしました。


この日に出ていったお金:13,810円 50万円の残り:205,194円

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