3日目、歩いて国境を越えた。長袖を忘れた北欧で、上着を買う
北欧の夏をなめていました。長袖を1枚も持ってきていなかったのです。朝の空気は、正直かなり寒い。この日の最初の目標は、観光ではなく「何か着るものを手に入れること」でした。
曇り空の、国境の町
宿を出たのは朝10時半ごろ。空は曇りで、全体がぼんやりしています。私のほうも、午前中は目が半分しか開いていません。
町の中心には、象徴的なラウンドアバウトがあります。その脇に建つ赤い建物が、昨夜ミートボールを食べたハパランダ・スタッズホテル。1900年から営業しているので、もう125年になります。
ハパランダの人口は9,000人ほど。川の向こうにあるフィンランドのトルニオは、2万人ほどの町です。線路は国境を越えてトルニオまで続いているのに、いまは国際列車が走っていません。ここから国境を越えるなら、バスに乗るか、歩くかの2通り。私は歩くことにしました。
町なかには、世界の都市までの距離を示す黄色い標識が立っていました。ロンドンとパリはおよそ3,000キロ、ニューヨークは6,480キロ。オーロラで知られるロバニエミは130キロほど。そして、ストックホルムは1,120キロ。一昨日の夜に出発してから、もう1,000キロ以上も移動していたことになります。
安ければ安いほどいい
25分ほど歩くと、国境のすぐそばのIKEAに着きました。手前にはショッピングモールもあります。
先にスーパーのCOOPに寄りました。スウェーデンでは、ペットボトルや缶を買うときにデポジットが上乗せされています。店の返却機に空のボトルを入れると、レシートが出てきました。この1クローナ分は、お店で使えるはずです。
IKEAの名前は「IKEA Haparanda Tornio」。2つの国の地名が、両方とも入っています。2006年に開業した、世界で最も北にあるIKEAです。店内には時計が2つ並んでいて、スウェーデン時間とフィンランド時間を指していました。両国のあいだには1時間の時差があります。ぎりぎりで動いていると、痛い目にあいそうです。
ホットドッグは10クローナ(158円)、シナモンロールは5クローナ(79円)。

コーヒーと、かじりかけのシナモンロール
ホットドッグなんて、どこで食べても味は変わりません。安ければ安いほどいい。シナモンロールも、カフェで買うのとほとんど同じ味です。安いうちに買っておけと、さらに5個まとめて買ってしまいました。貧乏人根性です。物価の高い国では、こういう場所が命綱になります。
ネットも速かったので、ここに腰を落ち着けて、たまっていた作業を片づけました。
国境を越えた実感が、まったくない

スウェーデンとフィンランドの国境に立つ「LAPPI」「SUOMI FINLAND」「TORNIO」の標識
交差点の青い標識は、右がハパランダ、左がトルニオ。左へ歩いていくだけで、国境を越えることになります。
歩いていたら、いつの間にかフィンランドに入っていました。トルニオと書かれた銅像の場所が、たぶん国境です。パスポートを見せる場所もなく、「ここから国が変わります」という表示も見当たりません。にしても、全然、国を越えた感じがしません。
上着は、国境のショッピングモールで見つけました。モールの天井にも、スウェーデンとフィンランドの国旗がついた時計が2つ下がっています。セール中で半額のデニムジャケット。それでも6,380円です。北欧の物価からすれば悪くないと、自分を納得させました。

国境に置かれたプレートと、スウェーデンとフィンランドの旗

国境の町に咲いていた白い花
トルニオ谷の博物館にも寄りました。館内は撮影できない展示も多く、写真に残せたのは一部だけです。歴史博物館は、その町の成り立ちが分かるので好きです。この町は、昔はロシアとスウェーデンの国境になったり、その前はスウェーデンの領土だったりしたそうです。境目の町の歴史は、思っていたより複雑でした。

トルニオ谷の博物館の展示。昔の織機や家具が並ぶ

博物館に展示されていた帆船の模型
いったんIKEAに戻り、昼ごはんはここのミートボールとコーヒーで済ませました。水辺ではカモが群れていて、両国の旗を交差させた石のモニュメントの前では、カモメが一斉に飛び立ちました。
川の上の国境
国道沿いには、ちゃんと国境の標識がありました。手前に「SVERIGE」、その先に「SUOMI」。「SUOMI FINLAND」の青い標識をくぐれば、そこからがフィンランドです。
いまの国境線は、1809年にスウェーデンがフィンランドをロシアに譲ったとき、このトルニオ川に沿って引かれたものです。対岸のハパランダは、そのあとスウェーデン側の町として大きくなっていきました。
歩道の橋を渡りながら、振り返ってスウェーデン側を見ました。高い建物のあたりが、昨夜のホテルのある中心街です。南を見るかぎりはハパランダのほうが栄えて見えて、トルニオ側は緑の多い景色。でも北のほうに目を移すと、家が立ち並び、その奥に町が広がっていました。人口を考えれば、たぶんトルニオのほうが大きな町なのでしょう。
「ここに列車は来ません」
夜行列車に乗るため、トルニオの駅へ向かいました。昔ながらのレンガの駅舎で、ホームの時計は2時半で止まっています。信号は赤のまま。あまり使われていない駅なのかもしれません。
駅のフェンスには、手書きの紙が貼ってありました。「NO TRAINS HERE」。その下に、別の駅の住所が書かれていました。電車に乗りたいなら、トルニオ東駅(トルニオ・イタイネン)まで歩け、ということです。線路そのものは、橋を越えて対岸のハパランダまで続いています。理屈の上では、国際列車も走らせられそうです。

線路沿いの道。トルニオで、列車が出る別の駅まで歩いた
そこから、もう一つの駅まで歩きました。途中のマクドナルドで飲んだマンゴーパッションの炭酸ドリンクが、めちゃくちゃおいしかったです。
ここからヘルシンキまでは、夜行列車で一晩です。やってきたのは、緑と白の2階建ての列車でした。座席指定料は12.8ユーロ(2,243円)。2階の窓際の席に座り、まずはスマホを充電しました。

ヘルシンキへ向かう夜行列車の車内

夜行列車の窓の外に流れる、夕方のフィンランドの森
窓の外には湖と川、そして森。ケミの駅には木材を運ぶ貨車が止まっていて、その先には木材が山のように積まれていました。夜の10時を過ぎても、窓の外の森はまだ明るいままでした。
この日に出ていったお金:12,041円(うち上着などの雑費 7,270円) 50万円の残り:284,897円