17日目、赤レンガの港町で雨に降られた。ハンブルクからリューベック、そして夜の駅へ
午後3時、ハンブルク中央駅に戻ってきました。ホテルはもうチェックアウト済み。バックパックは宿に預けてあります。
この日の予定は、少し欲張りです。近くのリューベックまで列車で行って、街を歩く。終わったらハンブルクに戻り、荷物を回収する。そして夜遅くの列車で、デンマークのコペンハーゲンへ向かう。日帰り観光と国境越えを一日に詰め込む作戦です。

ホルステン門のすぐそばの川岸。遊覧船が停まり、テラス席が並ぶ
ひとつのホームに、列車がふたつ
乗るのは15時6分発の普通列車、トラーヴェミュンデ・シュトラント行き。ところが、調べておいたホームに行っても、リューベック行きらしい列車が見当たりません。目の前に停まっているのは、赤い車体のまったく別の列車です。
少し歩いて、ようやく分かりました。ホームの先のほうに、もう1本、青い列車が停まっていたのです。こちらがリューベックへ行く列車でした。ドイツの駅はホームが長いので、ひとつのホームに2本の列車が前後に並ぶことがあります。それをすっかり忘れていました。日本ではあまり見ない光景なので、ちょっとしたカルチャーショックです。
車内はめちゃくちゃ混んでいました。とはいえ乗っているのは40分ほど。座れなくても、まあいいか、という気持ちで乗り込みました。
赤レンガの島へ
リューベック中央駅には、時間どおりに着きました。ドイツの列車にしては、珍しく。
駅から旧市街までは、歩いて10分から15分ほど。駅前の地図を見ると、旧市街は川に囲まれた島のようになっていて、川を2回渡るとその中心に入れる仕組みです。中央駅が中心街から少し離れているのは、ヨーロッパではいつものパターンですね。
歩き出してすぐ、向こう側に赤レンガの建物が見えてきました。どこからが旧市街なのか、ひと目で分かります。近づくと、重厚な赤レンガの建物が奥までずらっと並んでいて、ウミネコがニャーニャー鳴いていました。2本目の川を渡って島に入ると、かわいらしい窓がいくつも並ぶ家が続きます。結構好みかもしれません。
リューベックは、中世のハンザ同盟の中心だった町です。北ドイツやバルト海沿岸の商業都市が結んだ同盟で、最盛期には200近い町が関わっていました。リューベックはその事実上の首都と呼ばれ、同盟の会議もここで開かれていたそうです。その名残を見に来ました。
内には調和、外には平和
最初の目的地は、ホルステン門。リューベックのランドマークになっている、中世の城門です。1464年に建て始めて1478年に完成した、レンガ造りのゴシック建築。丸い2つの塔のあいだに、中央の通路があります。
この門は、表と裏で顔がまったく違います。街の内側を向いた面には窓がたくさんあるのに、外側を向いた面には小さな窓が少しあるだけ。外は戦いに備え、内は住む人たちに向けた顔になっているのです。

ホルステン門の街の側を向いた面。窓がずらりと並び、2つの塔のとんがり屋根が空に伸びる
外側の面には、ラテン語で「CONCORDIA DOMI FORIS PAX」と刻まれています。内には調和、外には平和、という意味だそうです。
門の中は博物館になっています。入ってみると、壁の説明板に、敵の側を向いた壁は厚さ3メートル、街の側の壁はそれよりずっと薄い、と書かれていました。敵の側の壁には大砲を置くための穴が並び、守られた街の側には窓がある。役目が違うから、つくりも違うというわけです。
展示の内容は幅広く、たとえばイングランドとの交易のコーナーでは、イングランドの羊毛をハンザの商人が大陸へ運び、リューベックの商人はノルウェーのベルゲンから干しダラを運んでいた、と紹介されています。ほかにも、度量衡や海の戦い、市民の兵隊、刑罰の道具まで。リューベックという町の成り立ちを学ぶには、ぴったりの博物館でした。

ホルステン門の博物館の展示。ハンザの商人とイングランドの交易を、古い版画で紹介している
リューベックでの食事は、川沿いにある「カルトッフェルシュパイヒャー」というお店で。名前のとおりジャガイモの店で、オーブンで焼いたジャガイモにいろいろな具を載せた料理が並んでいます。
100均のポンチョと、6時の鐘
夕方6時ごろ、旧市街の中心の広場、マルクトへ。ここで突然、雨に降られました。慌てて、100均で買ったポンチョを着ます。びっくりしました、本当に急に降ってきたので。
広場に面して建っているのは、市庁舎です。いまも市長の執務室と市議会が入っている建物ですが、とにかく立派で、「こんな立派な市役所あるかよ」と言いたくなります。
そのすぐそばに建つのが、マリエン教会。中世に建てられたゴシック様式の教会で、圧倒的に荘厳です。ちょうど6時の鐘が鳴っていました。壁の説明板によると、北ドイツのレンガ造りゴシック教会の代表例で、フランスの大聖堂の様式をレンガで建てた最初の教会。バルト海沿岸の多くの大きな教会のお手本になったそうです。1942年に完全に破壊され、1959年に修復を終えた、とも書かれていました。
雨の中、町行く人たちは雨宿りをするか、傘をさすか。リュックにカバーをかけている人もいます。ヨーロッパの人は、日本に比べてレインコート率がかなり高い気がします。傘をあまり信用していないのかもしれません。まあ、そっちのほうが正しいのですが。

雨に濡れたリューベックの商店街。三角の旗が通りの上に連なる
長旅の前の買い出し
このあとは長い移動が待っています。水と食料を買い出しに、ショッピングモールの中にあるスーパー、REWEへ。モールの中は小さなフードコートがあるくらいの、ごく普通のモールでした。
帰り道に、もう一度ホルステン門の前を通りました。今度は街の側から、門の正面全体を眺めます。そうこうしているうちに、雨がひどくなってきました。荷物もハンブルクに置いたままなので、市内観光は早めに切り上げることにしました。
改めて見ると、リューベックの駅舎はめちゃくちゃおしゃれです。駅のトイレは有料で、お金を払うと、ドイツの駅で使える50セント分の金券が出てきました。トイレに行くと割引券がもらえる仕組みです。

リューベック中央駅の発車案内板。「ようこそリューベック中央駅へ」の文字
カフェとは、空港のことです
ハンブルク中央駅には、帰りも時間どおりに着きました。昨日泊まったホテル「Prize by Radisson」まで歩いて、預けていたバックパックを回収します。駅からは歩いて15分ほど。直線距離は近いのですが、車線の多い大きな道を遠回りしないといけないので、地図で見るより時間がかかります。ホテルの前には電動スクーターが置いてあるので、急ぐ人はそれを使ってもいいかもしれません。フロントではコーヒーや紅茶が無料で飲めて、サービスのいいホテルでした。
さて、コペンハーゲン行きの列車は真夜中近く。まだ3時間以上あります。どこか別の街に行くには短く、ぼーっと待つには長い。中途半端です。しかも中央駅の周りのカフェは、夜9時や10時には閉まってしまいます。駅の周辺は夜になると少し物騒な雰囲気もあって、ここで粘るのも落ち着きません。
そこで向かったのが、私の知っている「安いカフェ」。つまり、ハンブルク空港です。ベンチがあって、静かで、時間をつぶすにはめちゃくちゃいい場所。おまけに無料Wi-Fiが爆速なので、今夜の列車で見る映画をここでダウンロードしました。ありがとう、ハンブルク。
座っていたのは、到着ロビーのちょうど到着客が出てくるあたり。ここが、思いのほか面白かったです。家族の再会、恋人の再会。きりっとしたビジネスマンが颯爽と歩き去っていく姿。娘のサプライズのためか、ハッピーバースデーの風船を持って待っている人。ベンチで到着を待ちわびて、ニコニコしたりソワソワしたりしている人たち。いろんな人間ドラマを、目の前で見ている気分でした。思わぬ副産物です。
夜10時半すぎ、到着便で来た人たちと同じように、空港線に乗ってハンブルク中央駅へ戻りました。
ホームの案内板には、23時56分発、行き先は「Koebenhavn H」。コペンハーゲン中央駅です。日付が変わる直前、デンマークへ向かう列車を待ちました。

深夜のハンブルク中央駅。23時56分発のコペンハーゲン行きが表示されている
この日に出ていったお金:4,956円 50万円の残り:107,808円